新解ぱくぱく辞典・ウ

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ウニ/ウナギ/ウメボシ/梅酒/ウド/ウーロン茶

【好悪が別れる】

 この項も項目が少ない。原著では【ウニ】に多くの行数が割かれているのである。確かにウニはうまい。このうまいウニを苦手とする人は意外と多い。ぜひ、ごちそうが「お造り」であるような宴会では、そういう方々と卓を囲みたい。彼等は、ウニを見るのすら嫌なのであろうから、そのような不愉快なものはこの私が片っ端から成敗してくれる。そして「ああ、あんな嫌なものをひとりで片付けてくれた」と感謝されるのである。なんてすばらしいのだろうか。

 さて、そのウニだけど、意外なことに日本中どこの海にもいるという。もちろん、どの種類も食用に適したものばかりではないそうだけれど。むしろウニがいるというのは、生態系が崩れて他の動物が住めなくなってきていることを意味しているらしい。あのうまいウニがと思うと不思議な気がする。

 ところで食用となるウニには「ムラサキバフンウニ」というような名前がついている。なんか、およそ食用とは縁がなさそうなネーミングである。いくらなんでも「馬糞」はないだろうと思う。きっと命名した学者はウニが嫌いだったのだろう。それにしても、嫌がらせに近い名前だ。

 ウニは生ウニが一番うまいのは間違いないところだ。世の中には瓶づめのウニもある。アルコールなどが保存のために加えられているので、味が変化しているし、ちょっと異臭がするし、舌触りも良くない。でも、これも酒のつまみには良くあうのである。ウニがきらいな人は、あんがい瓶づめのウニが嫌いで、生ウニを食わずぐらいになっているのではないか。といって、別に食べることを奨励する気はないが。

 他に意見が別れる食い物として、香菜(シャンツアイ。パクチー、コリアンダーなどとも呼ばれる)というものがある。台湾料理などの香り付けに使われる青い葉っぱだ。これは大好きか大嫌いか、はっきり別れる。私は大好きだ。香菜とウニを一緒に食べたらどうだろう。もしかしたら、全然合わないかもしれないが、ベストマッチかもしれない。きっとこのあたりで気持ちが悪くなってしまった方もいると思う。申し訳ない。

 口直しに【ウナギ】はいかが。これは、あまり嫌いという声を聞いたことがない。もっとも、蒲焼きに限ったことで、白焼きというのはそれほどおいしくないようだ。ウナギ自体は欧米にもあるのだろうが、蒲焼きのようなすばらしい食べ方をしていないはずで、好まれていない魚だろうと思う。大阪のウナギの重箱には、蒲焼きが層をなしている(まむし)とのことで、実にうらやましい。そういう食い方をしてみたい。山椒はかけないほうがいいと思っている。

 近所にウナギを自家で焼いたものを即売している小さな店がある。いちど買ったがうまかった。ただ持ち帰ったウナギを電子レンジであたため直すときに気をつけないと、焦げ目についたサランラップが溶けてしまう。これではもったいない。ジタンダものである。

 【ウメボシ】はなぜかウナギと隣り合っているが、両者は有名な食い合わせだ。でも、これで腹が痛くなるという話は実際には聞いたことがない。デマだろう。

 ウメボシは塩分が極めて多いので、1日1個ぐらいが限度だという。巨大なウメボシなら半個かもしれない。大人になって食えるようになったものである。あまり嫌いだという人を聞いたことがない。子供にとって苦手なだけだろう。

 【梅酒】は実家に梅の木があったため毎年作っていた。今は梅の木はないけど、梅を買って来て作ったりはしているようだ。でも、子供の頃、風邪を引いたときの吐瀉誘引剤のような使われ方をしていた(それにしても、風邪ってゲロ吐くとなおるのかな。お腹壊したときだったかな)ので、その記憶からいまだにあまり進んで飲む気がしない。うまいことはわかっているのだけど。それに、市販の梅酒はどうもまずそうだ。幻の飲み物に近くなってしまっている。残念だ。

 【ウド】とはまた変わったものがノミネートされている。変わった味わいのものだと思う。ウドが大好きだという人を聞いたことがない。でも嫌われるということもない。そういう食べ物というのはあるだろう。メインにはならないし、脇役として人気が高いわけでもないけど、たまにあると珍しがられるような。山クラゲとか。いわゆる「珍味」の眷属か。近所の安いスナックで、「常連さんからのお土産」ということでウドの和え物を突き出しに出されたことがある。安上がりでいいのではないか。その店なんて、突き出し2種類とふたりでチリワイン1本あけて、勘定がひとり1000円ちょっとぐらいだったりするのだ。なんか申し訳ないぐらいだ。

 さて、好きなもの嫌いなもの、いろいろ食べたあとは【ウーロン茶】でさっぱりしよう。このウーロン茶は今では極めてポピュラーなものだが、葉っぱから入れているのを日本でみたことがない。中国では当然、葉っぱから入れるのがいまでも当たり前のはずだ。日本ではほとんどがペットボトルだ。ウーロン茶自体、日本で売られるようになってから、20年にもならないと思う。そのころまでは、甘い味のしないものを自動販売機で売るという習慣が皆無だった。たまたま、ウーロン茶を売り出したら好評だったのが、自販機飲料のパラダイムチェンジになったということだろう。

 ウーロン茶が受けたのは、それまで甘ったるいジュースを白い眼にたえながら呑むしかなかった酒席の下戸たちに歓迎されたせいではないか。日本人は酒好きももちろん多いが、下戸もものすごく多い。本来飲めない人まで酒を飲んでいるのだ。ウーロン茶は、たくさん飲んでも飽きがこないし、はた目にはウイスキーでも啜っているかのように見える。また、確かに食事の後に飲むと口がさっぱりする。冷たい飲料としては日本茶よりも優れている。ミネラルウオーターよりは愛嬌もあるし。欧米の中華料理では、ジャスミン茶の方が一般的だと思うけれども、日本ではウーロン茶の方が好かれるのだろう。味に奥ゆかしさがあるせいだと思う。

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