2.抗議へ
麻原弁護団は、弁護団会議直後に安田さんが逮捕されたことを受け、「この違法・不当な逮捕は、ひとえに麻原弁護団の弁護活動に重大な支障を生じさせるものであり、その政治的意図を露骨に示したもの」と即座に抗議の記者会見をおこなった。安田さんが弁護を引き受けていた麻原被告の公判が12月3日に100回目を迎えた直後のことでもあり、「麻原弁護団の意図的な裁判遅延」という批判に乗じ、タイミングを図った逮捕と思われる。
さっそく安田さんには弁護人がつき、また多くの弁護士が安田さんに接見(面会)した。
また多くの人が抗議の声を上げ、インタネット上でも様々な形で情報が発信された(http://www.siri.co.jp/usr/koyanagi/diary.html等に関連ホームページがリンクされている)。
12日には、弁護士の有志を中心に不当逮捕抗議集会実行委員会が開かれ、市民運動も協力して、4日後の集会に向けて緊急に準備を開始した。具体的には14日に、不当逮捕抗議集会実行委員会、死刑廃止フォーラム、監獄人権センターで緊急共同記者会見を司法記者クラブで開催。死刑廃止フォーラム東京では、関東近郊のメンバーに集会案内ハガキを送った。
16日の「安田弁護士不当逮捕抗議集会」には、弁護士約140名を含め総勢500名を超える人が東京の弁護士会館に集まった。4日間の準備期間を考えると、いかに多くの人が安田さんの不当逮捕に怒り、心配しているかがわかる。
集会では、「不当逮捕に抗議し、即時身柄釈放を求める署名」活動が提起され、勾留期限をにらみ不当起訴がなされないよう22日が署名提出日に設定された。その期間は6日間しかなかった。にもかかわらず、全国各地から2956人分の署名が集まり、22日、東京地方検察庁に安田さんの身柄釈放を求める署名を提出した。
3.捜査機関情報の垂れ流し報道
逮捕直後のテレビでは、すぐさま「悪徳弁護士」であるかのように、捜査機関の情報が裏づけ調査なく垂れ流された。新聞も、翌朝から3日間は捜査情報が小出しにそのまま流された。新聞によっては安田さんの自宅の部屋番号まで書いてあるものもあった。捜査二課は汚職事件など知能犯の捜査を担当する部署で、通常は口が堅いところで有名である。しかし今回はマスコミに逮捕情報を流していたという。ただし、実際に安田さんのまわりを取材しはじめると「人権派弁護士の裏の顔としての悪徳弁護士」はどこにもなく、「悪徳弁護士」キャンペーンは持続できなかった。むしろ、最近では安田さんの献身的な弁護活動や人柄が紹介されるようになっている。
4.住管機構が逮捕翌日に安田さんを告発
住宅金融債権管理機構は、逮捕翌日の7日に安田さんを刑事告発した。住管機構が刑事告発した弁護士としては二人目という。しかし、逮捕「後」の告発は住管機構としての主体性も独自性もなく、逮捕を追認し正当化するメッセージ以外にどのような意味があるのか。
5.第二東京弁護士会が懲戒請求?
一方、安田さん所属の第二東京弁護士会で懲戒請求の動きがあるという情報が入ってきた。急遽安田さん個人をよく知る53人の手紙を携え、12月24日、第二東京弁護士会の黒木芳男会長と面会した。懲戒請求をするかしないか、その判断のための調査担当者は任命されていたが、現時点で、本人の弁明も聞かずに懲戒請求はしないとのことだった。なお、安田さんの起訴に際して、黒木会長は、「安田弁護士は弁護士会への貢献も極めて大きい、裁判の推移を重大な関心を持って見守っていきたい」とする談話を発表している。
6.起訴そして保釈請求却下
しかし、以上のような努力も実を結ばず、12月25日に起訴された。弁護団は同日保釈請求書を提出、しかし28日に却下され、準抗告(異議申し出)も同日夜に棄却された。
7.安田さん支援の会結成へ
死刑廃止フォーラムや弁護士の有志が中心になって安田さんの不当逮捕に抗議し、早期釈放に向けて活動してきたが、起訴により残念ながら長期的に取り組み直す必要が生じた。そこで、死刑廃止運動の枠を超え、幅広く安田さんの逮捕・勾留・起訴のおかしさ・不当さを訴えていくために「安田さんを支援する会・東京」が結成された。名古屋や宮城をはじめ、全国各地でも同じような「支援する会」が誕生しつつある。抗議集会も、現時点でわかっているだけで、1月23日には鹿児島で、2月6日には福岡で、13日には長野で開かれる予定である。
また、1月9日には大学の同窓生の会ができた。11日には人権と報道連絡会が今回の逮捕について集会を開き、同日第二東京弁護士会でも集会が開かれた。弁護士の間では、弁護士独自の「安田好弘弁護士の早期釈放を求める署名」活動が広がっている。
8.最近の安田さん
逮捕直後は全体状況も見えないこともあってかなりイライラしていたというが、最近は落ち着いているよう。仕事の虫だから、仕事が出来ないことが一番こたえている。留置場のメニューなど獄中で見ききしたことをノートに絵入りでメモをしているようだ。思った以上に濃かった留置場の味噌汁を延々と語り、気力は十分。最近では、「英語の勉強をしたいから本を差し入れてくれ」と伝えているともいう。
健康面は、これまでの「不健康を絵に描いた」ような生活から比べれば、規則的な食事と睡眠、タバコは1日2本、酒はもちろんダメ、一番嫌いな風呂も週2回は入っているとのこと。しかし、1月6日に、東京拘置所に移監となり、それも、いわゆる「自殺防止房」(就寝中も消灯されず、24時間監視カメラで監視される)に入れられた。警視庁の留置場と違い東京拘置所には暖房がなく、1日2本だったタバコも「ゼロ」になる。これからの寒さが心配である。
以上