安田さんを支援する会ニュースより
傍聴できないあなたのための公判解説(岩井信)
弁護士デビューのご挨拶
私はこの10月から弁護士になったほやほやの者です。もともとアムネスティというところで働いていまして、死刑廃止運動の中で安田さんにも出会いました。弁護士を目指して勉強していた時に安田さんが逮捕されて、しばらくは勉強も手につかず、私にとっては「強制執行妨害」というより「勉強妨害」ではないかと思ったくらいでした。ようやく修習が終わり10月から弁護士となって、安田弁護団にも入りました。
今回は弁護団から見たこの事件について説明したいと思います。
前回のこのニュースで藤沢さんの解説が非常にわかり易くかつこれまでの流れをコンパクトにまとめられています。これをふまえて事件の全体像と、前回報告されて以降のS社長の息子さんのSNさんと、日住金のNNさんという二人の証人を中心に報告したいと思います。
強制執行妨害罪の問題点
最初に事件の全体像を振り返ってみたいと思います。安田さんが今回起訴されているのは「強制執行妨害罪」です。非常におどろおどろしい刑罰のように見えますけれども、最高刑は2年です。
新聞などでは「強制執行妨害罪」で日本の経済秩序を破壊し云々というふうに報道されていますけれど、刑罰体系の中で見ると今までは余り注目されてこなかった犯罪です。
なぜ今まで使われてこなかったかというと「強制執行妨害罪」というのは、一つは「強制執行を免れるため」という目的が無いと罰することができない犯罪なのです。こういう目的は人間の主観を立証しなくてはいけないことですから、裁判で立証するのはそんなに簡単ではない。ですから今までは執行関係に関する犯罪としては、例えば「公正証書原本等不実記載」という形で嘘の登記をした場合等、非常にわかりやすい形の犯罪で逮捕され起訴されるということが多かったと思います。住専関係で逮捕された弁護士さんが何人かいるのですけれども、その人たちも他に公正証書原本等不実記載でも逮捕されていまして、「強制執行妨害罪」だけで逮捕してきたのは、特に弁護士としては安田さんがはじめてだろうと思います。
債務返済―民事と刑事
どういう「強制執行妨害」なのか。簡単に言うと賃料債権に対する差し押さえを免れるためにということなんです。
お金を貸しますよね。借りた人は一応返すという前提で借りているわけです。ところが返せなくなる。返せなくなったときどうするか。日本では返せなくなったからといって、それで犯罪にはなりません。昔、歴史的には返すまで働かせる「債務奴隷」なんてことがありましたが、それはよくないだろうと。個人と個人の関係では、貸すときにもよく考えなければいけないし、貸したほうにも責任がある。ですから、民事の世界では返せなかったからといってそのまますぐ刑事の責任にはならないのです。
じゃ、どうするか、いくつか手段があります。債権者の人が諦めちゃう、そしたらそれで終わりですね。債権者が放っておく、放っておくと5年なり10年なり経てばお金を返さなければいけない義務が消滅する時効制度もあります。その場合には借りたものが借りたままで終わっちゃう。
あるいは、お金を貸すときに返せない状態を事前に想像しておいて、抵当権をつけるんですね。マイホームを作る、マイホームに抵当権をつけて銀行からお金を借りるということがあります。そうするとお金を返せなくなったときに抵当権を銀行が実行して、マイホームを売ったお金で返しましょう、というのが別の方法としてあるわけです。
賃料差し押さえという方法
もう一つ、特にバブルが崩壊した後に脚光を浴びてきているのが、賃料に対する差し押さえというものです。例えば債務者が自分の財産であるマンションを別の人に貸している、そうすると賃料が入るわけです。債務者はその賃料を自分の懐に持っているわけですけれども、その賃料をお金を借りた人が貸した人に返したければ返せばいいし、返したくなければ極端な話、返さなければならない義務は無いんですね。それを抵当権を設定した人がみすみすその賃料がとられるのが厭だと思えば、申立てをして賃料債権を差し押さえれば、差し押さえた後に請求した賃料を自分のものにすることが出来る。
この賃料債権を差し押さえるということがなぜ最近にわかに脚光を浴びているかといえば、今まで日本では不動産と言うものは年が経つに連れて高くなると思われていたのです。ですから抵当権を不動産に設定すれば、抵当権を実行して競売にかけてそのお金で債務を返済すればよかったのです。ところがバブルが崩壊した後、誰もが予想もしなかったことに土地や建物の値段がどんどん下がったわけです。抵当権を実行して競売にかけても借りたお金を返すようなお金にならなくなったんです。そこで、将来、もしかしたら又昔のように不動産価格が上がるのを待とう、それまでの間借りたお金に利息を払わなければいけない。その分だけでもとりあえず賃料で払っておいて、また不動産価格が高くなったときに競売にかけて、それで借りていたお金の元本を返しましょう、ということが考えられるようになった。そんな事情で10年以上前には余り注目されなかった抵当権に基づいて賃料債権を差し押さえるという民法の制度が脚光を浴びたわけです。
今回の事件について説明しますと、安田さんが顧問をしていたS社という会社が、麻布ガーデンハウスと白金台サンプラザという二つの建物を持っていて、その中のテナントが賃料をS社に払っていた。ある時期からそのS社が別の会社、一つはエービーシー社、一つはワイドトレジャー社に一括して賃貸して、このエービーシーとワイドトレジャーが個別のテナントに転貸をしたという構造になっています。
賃料債権を差し押さえるときには誰が部屋を借りていて誰が貸しているのかということを特定しないと差し押さえることはできないことになっています。
もともとはS社がAさんに貸していた。それがS社はこんどエービーシーという会社に貸して、エービーシー社がAさんやBさんに貸している。少し関係が複雑になっている。それは賃料の差し押さえを免れるためにしたのではないか、だから「強制執行を妨害しようとしているのだ」というのが、大雑把に言ってしまえば今回犯罪とされている事実です。
背後にあった横領事件
ところが事案の真相は何かといえば、最初は、住管機構がS社の経理がおかしいと目をつけたところから始まったんです。何がおかしいか。2億円あまりのお金の動きがおかしい。実はそれはみなさんご存知かもしれませんけれども、S社の社長さんたちとは別に、経理を担当している人たち、4人くらいの社員が社長に黙ってお金を貯めこんでいた。自分たちの退職金という名目を付けて、勝手に横領してたんです。なぜそれが横領と言えるかというと、彼女たちは辞めるときに社長から別に退職金を貰っているんです。退職金を二度貰っているんですから、それは明らかに横領としか言いようがないわけです。その人たちが隠し口座に隠していたお金の額が約2億円。
住管がこのS社は強制執行妨害をしてお金を貯め込んでいるんじゃないかと疑惑をもった、まさに同じ額が社員によって横領されていた。
ですからこの事案の真相と言うのは、「強制執行妨害罪」ではなくて、社員たちによる「横領事件」なんです。これが表と裏の姿なのです。ある事実でも光を当てる側面を変えれば全然違ったものに見えるわけです。
ただ外形的な事実としてエービーシーやワイドトレジャーという会社がもともとのS社とテナントとの間に入った形で新しい賃貸者契約関係が結ばれているので、検察側は横領事件とは別に強制執行妨害罪は成立するんだ、たまたま同時進行していただけなんだというわけです。
安田さんの保釈が3回地裁に認められて3回とも高裁から蹴られて、4回目に高裁がやっと認めたということは皆さんも覚えていると思います。東京地裁も最初は安田さんの保釈を認めなかった。安田さんの保釈を認め出したのが何時からかというと、当の横領の張本人である経理を担当していた人が裁判で横領の事実を半分認めた、その公判が終わったあとからです。横領した人たちは横領事件では逮捕もされていないのに、安田さんが逮捕・拘留・身柄の拘束を続けられているのはおかしい。明らかにそういった事実が裁判所に伝わったんだろうと思います。
ただ、今では裁判官が全部変わっていて、第1回公判にいた裁判官は誰一人残っていません。第1回公判にいた検察官も誰一人いません。第1回公判からいるのは、安田さん本人と弁護人だけです。審理の過程において新たな事実が劇的に出てきて、みんながびっくりし、それによって事案の真相はこういうことだったんだとわかったことを身体で覚えている、そういう人たちが毎回ころころ代わっていなくなっているのです。
新しい裁判官たちにもう一度身を持ってそれを体験してもらえるかどうか、というのが非常に大きなポイントになってくると思います。
共謀はあったのか
今回の事件は安田さんをいれて共謀したといわれている共犯の人たちは全部で4人。S社長と息子のSNさん、不動産関係担当をしていたSTさん、金融関係との交渉をしていたIKさんで、安田さんをいれると5人ですね。この人たちが1993年(平成5年)の2月19日に強制執行を免れるために別の会社を間に噛ませて、賃料債権を差し押さえしにくくしようと謀議したというのが検察官の主張です。
今回の場合、法律的に何が問題なのかというと、本当に強制執行しようとするような切迫した状況だったのかどうか。そういう状況でなければ民事の世界ですから、貸した貸さないと言うのは当人同士で話し合うことで、国がしゃしゃり出て刑事罰を科すというのは、本当は原則じゃないんですね。お金を返してないからイコール犯罪ということにはならない。そういう意味で本当に切迫した状況で、なおかつそういう中で強制執行を免れる目的があったか、それが犯罪として成立するためには必要とされます。
もう一つはこうした4人、ないしは安田さんをいれて5人が2月19日に本当に共謀していたかどうか、それが大きなポイントになります。
それと関連しますけれども、共謀したという裏には実際に犯罪になる行為としての実行行為があったのかどうか。具体的に言うと今回の場合は、強制執行を免れるためにエービーシーとワイドトレジャーという会社を間に入れたのかどうか。安田さんがどういうアドバイスをしていたのかが問題なわけです。
安田さんがアドバイスしていた内容と言うのは一貫して、S社は将来的にはこのままでは会社としてもたない、最終的には持っている財産を売って、清算会社となって債務を返済する。お金が無いものは払えないのだから、破産と言う制度もありますよね。まさに清算して全額債権者に返せるものは返す。で、それとは別に新しい事業を起こして、新しい別会社が今までS社で働いていた人たちを雇用して、新しく事業展開をしていく。その基盤作りとして、「所有から占有へ」、すなわち、今までの不動産を所有してその不動産をいわば売り抜けしてその差額をもらうという発想ではなくて、不動産を持たないで、その不動産に付加価値をつけて多くの人に借りてもらって、サービス業として不動産業を展開していく、そのようなアドバイスだったのです。
アリバイもあった息子さん
前回の報告以降の証人は、社長の息子のSNさん、日住金のNNさんの二人です。
SNさんに関していうと、2月19日の謀議、強制執行妨害のためにこういう事をしようと打ち合わせた会議に出ていなかった。推理ドラマのようですけれども、要するにアリバイの主張が今回一つ大きなポイントになりました。
また、SNさんは、安田さんが主張していたように、S社は将来的には消滅して、別会社を作って新しく事業を展開していくという別会社構想に則っていろいろ主張していた。その主張が、後でわかったところによると、横領しようとしていた4人組の人たちに毎回阻まれていた。そういう構造がSNさんの証言で出てきた。
謀議の方でいうと、S社は日本だけでなくアメリカにも子会社を持っていて、そこの社員のJさんという人がたまたま日本に旅行に来ていたんですね。2月20日はS社長のお父さんの命日でお墓が横浜の外国人墓地にある。上海からの仕事の帰りにJさんが日本に寄って、当時仲のよかったSNさんと19日の朝は葉山にドライブに行き、20日にはお墓参りに行った。逆に言うと安田さんの会議は19日の午前中にあったので、とてもそれには行けなかったということです。
ワイドトレジャー設立の目的
もう一つは、ワイドトレジャーを何のために設立したかという事です。S社は目黒ハイツという別の物件を持っていたんですけれども、これは保証マンションという形をとっていました。普通のマンションは毎月賃料を払う形ですね。ところがこの保証マンションと言うのはまとまったお金を最初に預けておいて、その後は賃料を払わないというマンション形態なんです。最初に一定のお金を貰っていますからそれをうまく運用すればいいわけですけれども、経営的には定期的にお金が入る賃料という形に変えたいわけです。ところが入っている人にとっては保証金を預けてそれ以外賃料を払いませんという契約をしているので既得権益がありますから、これから毎月10万円なりの賃料を払い直すのは厭なわけですよ。それで目黒ハイツをどうしようかという全然別個の問題があったわけです。これを解決するのに安田さんのアドバイスとしては、一挙に改装して、その改装費代もS社が持つ。その代わりにこんなにいいマンションに変わったんだからこれを機に全部賃貸借契約に変えましょうという提案をして、普通のマンション形態にしたいと思った。その時に別会社を作って、その会社がリフォームをすることにする。当時から別会社構想というのがありましたから、そういう流れの中でワイドトレジャーを作ろうということになった。特にSNさんは社長の息子ということで、将来が期待されているし、本人も父でもある社長とは別に独立して事業をやってみたいという気持ちもある。その中でこのワイドトレジャーを設立したという経緯があったのです。
ただ、不思議なことにこのワイドトレジャーは目黒ハイツの301号室を会社にしたわけですが、601号室にもワイドトレジャーという標識が実はあったんですね。ワイドトレジャーが二つ存在したことになった。601号室のワイドトレジャーについてSNさんは一切知らなかった。一体それは何を意味するのか。
じつは横領4人組がお金を隠すためにワイドトレジャー名義で隠し口座を作っていて、その関係の文書などが送られる先を601号室にして、「二つ目」のワイドトレジャーとしていろいろ使っていた、そういうことが明らかになってきたわけです。
ワイドトレジャーというものが強制執行妨害のために作られた会社だと検察側は言っているわけですけれども、そもそもの目的としては別会社として目黒ハイツを改装するちゃんとした正当な理由があったわけです。起訴状に「実体のない会社」と書かれていますけれど、横領4人組の人たちが自分たちのお金を貯めるためにワイドトレジャーをまんまとぬけがらの殻にしていたという事実が見えてきたわけです。
別会社がうまくいかなかった理由
SNさんは前から「お父さんのやり方では駄目だ、新しい発想で事業を展開をしなければこのバブル崩壊後を生き残れない」ということで、安田さんなんかのアドバイスもあって、幾つかのそういう試みをしたことがあったんです。
SNさんが中心となって新しい会社を作っていく、古い会社は整理していくという提案をしていたわけですが、S社長は一種のカリスマ性を持ってゼロから会社を作ってきた人ですから、迫力があるわけですよね。その前ではなかなかSNさんが自分で局面を打開することはやりきれなかったんです。毎回中途半端になってしまった。
安田さんは一貫して別会社を作る、ただしその条件としてはスンズ社が自分の持っている不動産を売って債務を払い、最終的に清算をするということですから、この会社は閉めるということなんです。
別会社として新たに事業を立ち上げ、前の会社は負債を背負ったまま清算されていく、そういう手法というのはよく取られることですが、今回不幸なことに、安田さんの一貫したアドバイスどおりにはいかなかった。
ここで重要なのは、横領4人組の人たちが新しい会社ができると自分達は再雇用されないんじゃないかということで恐怖感を憶えたということです。そのままリストラされちゃうんじゃないかということで自分達で退職金を貯めなくちゃという発想になったんです。結果的には会計担当が横領のリーダーですから、別会社構想がつぶれて、S社の主体も残っちゃった。それが今回の起訴にいたる背景にあると思います。
いずれにせよ2月19日の謀議はなかったし、SNさんはそこに参加もしていなかったし、参加していることを前提にする起訴状もおかしくなるわけです。また別会社を作った理由も執行妨害のためではなかった、ということが出てきていると思います。
住管による債権の「マネーロンダリング」
もう一人、NNさんという証人が前回から出ています。この人は日住金という住専の一つの会社の社員で、その後住管に移籍した人です。白金台サンプラザと麻布ガーデンハウスという二つの物件の債権者の大きなところは、住総と日住金という二つの住専の会社でした。債権が回収できなくなったことの被害者はこの住総と日住金なのです。
その日住金の担当者が今回やっとよばれたんです。普通の事件では被害者関係の人が一番最初によばれます。その関係の記録というのが被害届と言う形で一番最初に来るわけです。今回は被害届を代わりに出したのは誰かというと、住管の中坊公平です。彼が告発状を出した。それがいわば代わりになっているんです。
ところがさっきも言いましたけれども、お金を貸す、借りる、それはいろんなやり方があるわけです。話し合いで解決して100万円を借りたけど返すのは30万でいいよね、ご免ねというやり方もあるかもしれない。貸したほうも事業が成功しないということを見破れなかったという責任があるかもしれない。驚くべきことに、住総も日住金もS社に対して一回も差し押さえをしていません。実際に債権者として熱心に債権を回収する手続きを取ってないんです。
わかり易く言えば債権者として怠慢だったわけです。ところがその債権を「債権譲渡」として住管が受け取ったことで、住管がいわば被害者のような形になっちゃった。住管が貸したのではないのです。
マネーロンダリングと言う言葉がありますね。犯罪で作られたお金が銀行口座をいろいろ移転することによってお金の出所が判らなくなって、きれいなお金としてまた使えるようにする。この「債権譲渡」というのは債権者の瑕疵を判らなくするいわば債権のロンダリングです。
賃料債権を差し押さえるというのは、債権者がしたければすればいいけど、しないといけないものでもない。しないところもたくさんあるんです。差押をしてもいないのに、強制執行妨害だというのは本当はおかしいのです。それが債権譲渡によって過去のいきさつが全部チャラになっちゃって、住管はお前は悪い、借りたお金を返せってことで、債権譲渡によって日住金や住総との関係のいきさつが一挙に無くなってしまった。だから本来ならば一番最初によばれるべき日住金のいわば被害者の人が、裁判が始まって2年経ってようやく今回出てきた。
債権者と債務者というのはそんなにいつもいつも敵対関係ではないわけです。お互いがお互いにいわば寄り添って生きているという言い方が出来ます。貸すほうはお金を貸して利息を稼いで最終的には返して欲しいし、そういう中で強硬手段ばかりとっているわけにもいかない。まあその中で人間的な付き合いも出てくるかもしれない。その中でいろんな情報をシェアしたり交換しているかもしれない。はたして本当に今回のようにS社という債務者だけが責められて、S社だけが刑事責任を負うべきことなのか。いわば交渉ごとの民事の世界において、それを刑事事件化していいのだろうかという根本的な問題というのが出てくるわけです。
民事事件の理解を求める
込山弁護士が支援の会の集会で、これは刑事事件なんだけれども極めて民事事件的な裁判の進め方をしているんだと言ってます。どういうことかというと、たくさん証拠を弁護側からも出しているということです。
刑事事件の多くの場合は、なるべく証拠を少なくして裁判官が直接触れて心証を得るのを法廷だけにすることによって、裁判官に余りフリーハンドを与えないというか、そうしていくんですけれども、民事の場合はむしろいろんな証拠を出していって、民事の世界の駆け引きの実態をこの事件で知ってもらわないと、民事の実態に全然そぐわないですね。
弁護団が危惧していることに、検察官はいつも刑事事件ばかりやっているわけで、はたして民事のお金の貸し借りの実態をよく知っているのだろうか、刑事の裁判官はそうした民事の解釈論をよく知っているのだろうかということがあります。
そこのところが本当に裁判官や検察官にわかってもらえるかということが大きな課題として常に残る。
外形だけ見てダミー会社、賃料を払わせないように誤魔化した、そういう言葉だけが一人歩きするとなんか悪いことやっているように見えるけれども、正当な経済行為としていろんな事業があるわけです。そこらへんがうまく伝わるかどうかということが今後の課題かなと思います。
まとめ:編集部 紙面のつごうで、検事が民事のことを良く理解していない実例として指摘された部分などを省略しました。検事の皆さんには思い当たることがないか、胸に手をあてて、よーく考えてほしい。